いよいよ大衡村は牛野ダムでのキャンプに繰り出す。
まず出遅れた。前日にワインなどの酒を飲み、何の準備もせず、コタツで寝てしまう。相棒はロクに酒も飲まないのに、朝は滅法弱いので、アラームのスヌーズ機能のように何度も起こさないと起きない。
こちらの二日酔いによる頭痛も治まり、ようよう起き出し準備する。既に午前11時をまわっていた。もう何も言わず、今日もキャンプに行くのだ。
12月に入り、閉鎖していないキャンプ場は限られる。遂に我々は宮城キャンパーの聖地(?)牛野ダムキャンプ場へ向かう。
愛車の餅男の油も大衡村ならば足りる。
今回はポールも忘れない。
薪もまた使いたいね、炭も足りないね、など話しているうちに大和町のスーパーに着く。
今回の食材。
前回子持ちししゃもに感動したので今回も子持ちししゃも。あとは汁物用に鳥もも肉、生姜、カット野菜(ニラ、もやし入りのもの、洗わなくていいやつ)。安いウィンナー。これは安くても火がいい塩梅になれば高級ウィンナーに匹敵することが前回の網焼きで分かったので、十分だろうということで、安ウィンナーとなった。それだけいい火を作る自信が湧いたのである!相棒に!
あとは変わらず、酒。前日にワインを飲み過ぎたせいでワインの顔も見たくもない。というわけで、ビール中心に攻める。ビールというより発泡酒。あとは珍しいハートランドの瓶ビールと、バドワイザーがあったのでそれを。念の為、温かい酒が飲みたくなっても困らぬよう梅酒も買った。あくまで酒なのである。会計は奇跡の3200円程度。
これは我々に取捨選択が出来ていることを意味している。
仙台から1時間足らずで到着する。
驚いたことに、キャンパーが沢山いる。
完全に出遅れたことが分かった。
ああ、我々は今までマニアックなキャンプ場にばかり行っていたのだろうか、いや、不便なキャンプ場にばかり行っていたのだろうか。こんな季節にキャンプをする人間が他にいようとは、ブログなどでは知っていても現実に目の当たりにしたことはなかった。
そして実に皆様オサレである。こここここれは…
そして困るのは場所選びである。餅男を走らせ、ダムを一周する。ううむ。
日当たりの良い場所にしたいので、結局一周し、少しダムの水辺に近いところに決めて…
むむむ…薪と炭を買い忘れたことに気づく。仕方なしに、炭は前回からのを大事に使い、薪は諦める。枝を拾う。
相棒はまた鬱になりかかる。
とりあえずテントと、ブルーシート(!)タープの場所を決めて、きちんとコールマンポールを立てて、設営を始める。
そうして出来上がる貧乏キャンパーの牛野ビギナーズ。
こここここれは…難民キャンプのような ホームレスのような…温泉街の朝市のような…
そして周囲を見渡すとそれはそれは剛健そうなテントや瀟洒なタープが…
相棒はご満悦である。これぞ私の求めていたキャンプ。タープはブルーシート、バケツの焚き火台、ブルーシートを敷いた前室は屋根も囲いもない。
しかし私はまだまだ豪傑ではなかった。周囲の美しいテントやタープが羨ましくなってしまった。これぞ真の軟弱者である。そして自意識過剰だ。そんなこたぁ知っている。鬱の相棒の方がよほど逞しい。
もう良い。とりあえず、コールマンのポールである!タープの本体はどこぞのブルーシートでも、支柱はコールマン!彼は、見事に真っ直ぐに支えてくれた。
そしてタープというやつは凄い。
安心感を生み出すものだ。多少ではあるか防寒にもなるし、少しのプライベート空間を創り出すものなのだ。ブルーシートではあっても。
この中にテントを設営する。テントの設営は手慣れたもので、もはや5分程度である。
今回もテントの入口前にスペースを作り、前室代わり兼地べたに座れるゾーンを拵える。座っても寒くないように、実に沢山の物を敷く。まず広げたブルーシート。これはテントの下にも敷いている。この下に相棒父より譲り受けたテントの下に敷けるなんかスポンジ状のやつをひいて、更に工業用断熱シートを敷く。これは相棒の仕事用品の余り物で廃棄するというものをいつまでも後生大事に取ってあったものを活用した。
なおかつこれの上に車窓用のサンシェード的な物をひいて、車の座席の座布団を敷く。これだけ敷くと、座っても寒くなかろう!
炭おこしの前に気づく。あああ!網もねぇ!忘れてしまった…
相棒の不機嫌はここでマックスになる。このままでは鬱を発症してしまう!しかし、新たな仲間がいる。それはステンレス製の長い長い串である。一本98円くらいの物で、どこかのホームセンターに行ったときに入手したのだ。これを使用すれば、網がなくとも焼ける。むしろ、ししゃもを波打つように刺して、まるで捕まえた魚を焼いて食べるような感覚まで味わえるわけだ。そんな話をしているうち、相棒の心が穏やかになる。よし、それでいこうじゃないの、というかそれしかないよね、と。ソーセージ類もそうやって焼こう。原始人のようで素敵だ。
原始人は多分ソーセージ食わないけどね!
設営、炭起こし、鳥味噌汁の準備を終える。この鳥味噌汁、生姜のみじん切りを大量に入れることで美味くなる。豚よりあっさりしている。作り方は豚汁と一緒だ。
アウトドア用バーナーで一気に作り上げる。
問題の網無し網焼きである。
まずはししゃもを串に刺す。
美味い!けど串に刺すことで、もしかしたらししゃもの汁気が抜けてやしないか。でも美味い。もはや雰囲気とかそういうものも含めてのうまさかもしれない。
だがそれでいい。
安ウィンナーも刺して食らう。安定の美味さ。ビールが進む。
ふと土の上を見る。霜が降りている。。。ふとテーブルの上を見る。先ほど垂らした水が凍っている。。。
ああ、12月なのだ。
我々はいよいよ冬キャンプに片足を突っ込んでいる。今回も防寒に気合いを入れた為か、寒さはあまり感じない。
そして今宵はほぼ満月。風もなく静穏。
早々に眠くなる。22時も過ぎているが、周りからはまだ楽しそうな声が聴こえる。それは安心する声だ。この声を聴きながら眠りたい。相棒は相変わらず夜型でまだ寝たくないようだがこちらは寝たい。iPhoneの充電もないことだし、朝早く起きたいから寝ようと強引に相棒も寝かす。
夜半、軽い尿意が気になり、薄ら起きる。
しかし面倒だし、多少の恐怖で無かったことにして眠り続ける。周りは静まっている。
そして明け方また目が覚める。今度は謎の音がする。風かとも思ったが、何となく違う。
何かに前室スペースを弄られているようなのだ。しかもごくごく、密やかに。ホイルやら、ナタやら、ゴタゴタしたものをまとめている容器に被せている袋をカサカサっと。
実に耳元で鳴っているのである。風であれば、袋だけでなく、このテントやタープや、他のもの、周りの草の音も鳴りそうなのに、袋のカサカサしか聞こえない。
((((;゚Д゚)))))))
いわゆる、ガクブルである。野生動物だろう。熊ではないにせよ、タヌキやら、野犬やらでも姿が見えないと怖い。鳥ですら怖い。
まず相棒を起こす。完全に寝起き悪い相棒は超絶不機嫌である。風じゃないの、熊じゃないの、など180度くらい違うことを言ってはこの小心者の心を抉ってくる。
しばしおさまり、また今度は足元の方でカサカサいっている。それ聞いたことかと再び相棒に声をかけると、相棒は面倒くさそうにテントを蹴った。なるほどと思い、真似してもっと強くテント内部から蹴ってみる。すると、音は止み、静寂が訪れた。気になって、テントを開けようというと相棒は嫌がる。それは嫌だろうけど、荒らされていたらそれはそれで嫌だろうと言うと すんなりとそうだなと合点する相棒。
極度の近視である我々は、眼鏡を装着して周囲を窺う。
まるで荒れていない。
とりあえず寝ることにする。明るくなってからもう一度確認する。
朝が来る。
やはり全く荒れていない。
それは良かったが、言っておくが物凄く怖かった。今までのキャンプ史上、一番怖かった。しかも荒れていないから痕が何も残っていない。謎のままである。
なかなか起きない相棒を尻目に、まずトイレへ向かう。そして帰りに、昨日通らなかった道を行くと、草むらに未消化の木の実が大量に混ざった糞らしきものがあった。こいつか…?!熊じゃなかろうな…わからぬ…
相棒を起こし、その落し物の件も報告する。しかし熊やら野犬やら猿やら、タヌキも危なそうな輩の場合はまるで周りが荒れていないことはなかろうから、ごくごく小型の生物ではなかろうかという推察になっている。
ネズミや、猫。なにやら猫もいるらしいので。カラスなどの可能性も考えたが、鳥類にしては羽ばたく音もしないし、鳴き声など一切なかった。よって、我々の間では、ネズミで落ち着いた。
もし、どなたか情報あれば教えてください。牛野キャンプ場に出る野生動物。猿のような声はするけど、果たして猿が、鳴きも荒らしもしないで立ち去るだろうか。
まぁ何にせよもしわたくしが野生動物ならば、このいかにも無防備そうな、少し大勢より離れているこのテント周辺ならば何か漁ることが出来るかもしれん、と考えるであろう。
今回の事件を踏まえて、もう少し寝る前の状態を整理する必要がある。ゴミや食品は気をつけてクーラーボックスに入れたり、車に入れたりしていたが、荷物を一箇所にまとめたりすることで見た目も良いし、このようなことは起きづらいかもしれぬ。
そしてまた、相棒は言う。
果たして、生物ではなく、人でもなく…
ということは人外のものでは…??
お化け的なものが、テントを内側から蹴ったくらいで逃げるだろうか。
随分と可愛いな。
さて朝餉を終え、撤収である。
まずは自分たちの場所をゆっくりと片付けて、そのほかに我々の物ではないゴミも片付ける。
憤慨しながら拾う。
白状しよう。これは慈善ではなく、我々が散らかしたと思われたくないという自意識がまずはある。
そして心のどこかに、大嶽山交流公園の時のように、その土地の神様がいて、そこを汚したら怒られそうだし、落ちているものを見て見ぬフリをするのも怒られそうなので拾っていこうという気持ちもある。
結果論として少しでも片付くならそれでいいと思う。
こんなに広くて、仙台から近くて、謎の生物はいるにせよ人が多くて安心感があるような良き場所が閉鎖になっては悲しいから、我々はせめて、自分たちの使用した周囲だけは拾っていこう。これは偽善ではなくて、次にまた来たい自分たちの為だ。これからもキャンプをしたいからだ。